イモリ類を迎え入れる前に、最も熟考するのがその「ケージ」でしょう。
実際ショップに赴くと、その数の多さに圧倒されてしまいます。
ケージはイモリ類を育てる上で、一番の主役です。
しかも他の脊椎動物と比べ、イモリ類に特化した「専用ケージ」と言うものはほぼ流通していません。
このため頭を悩ませる飼育初心者が続出しています。
今回はそんなイモリ類の飼育初心者のために、またベテラン飼育者が今一度イモリ類のケージについて見直すために、細かく言及しました。
メリットはもちろん、デメリットについても詳しくお伝えします。
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〈目次〉
イモリ類の飼育ケージの選び方 |
水槽系ケージのメリットデメリットとオススメ点について |
プラスチック系ケージのメリットデメリットとオススメ点について |
専用ケージのメリットデメリットとオススメ点について |
まとめ |
目次
イモリ類飼育のケージの選び方
イモリ類の飼育者は、プラケース→水槽→専用ケージ→創意工夫…と言った様にケージへの拘りが進化しがちです。
創意工夫とは既存のケージに手を加えたり全てをDIYでまかなう事を示します。
これは長年の経験と知識が物を言うので、今回は割愛させて頂きます
この変遷は率直に「値段が安い順」に過ぎません。
進化と言いましたが、イモリ類のケージは飼育種やその状況により、退化することも可能です。
要するにどの段階のケージも人間側には一長一短であり、イモリ類に取っては全てが快適に暮らせるケージという訳です。
飼育者次第であらゆるシーンに用いられるケージ、その選び方には多くのポイントがあります。
まずイモリ類はかなり不活発…分かりやすく言えばのんびりとした性格です。
立体活動はほぼ行わず、リクガメの様な平面生活者がその大半を占めます。
リクガメは平面面積を充分に用意しないと、ストレスが溜まり拒食や成長不良に繋がります。
しかしイモリ類には、その様なことは全く起こりません。
45〜60cm規格水槽準拠の底面積があるケージなら、殆どのイモリ類が問題なく飼育可能です。
水棲種や大型種のイモリ類飼育は例外でしょう。
これらの種を飼育する場合は、水棲種は水深の深さを保つための高さ、大型種はより大きいケージを用意しましょう。
またイモリ類の皮膚はかなり重要な「器官」でもあります。
魚類や爬虫類の様なうろこがないため、呼吸や水分補給を皮膚に強く依存するのです。
蓋以外の空気穴やスリット等は、水分を逃しやすいので、その様なケージは避けた方が無難です。
もしくはスポンジや水槽用シリコン材で徹底的に穴埋めをしましょう。
イモリ類は思わぬ穴からも逃げ出してしまうので、脱走防止にも有効です。
その反面、イモリ類はある程度の空気循環も好みます。
蓋には網目状の既製品を用いるか、枠を残し切り取り、園芸用マット・網戸の素材などを当てがい空気穴を設置する必要があります。
もちろん蓋とセットのケージでも構いません。
イモリ類にとって有害な化学物質等が含まれるケージは決して使用してはいけません。
必ず素材が明記されているはずです。水溶性物質が含有されていたら、ケージ候補から外しましょう。
ケージ選びで最も大切なことは、どんな小さな隙間も見逃さないことです。
前述の空気穴・スリット等はもちろんですが、蓋とケージの僅かな隙間・コードを通す穴など、隅々を確認しましょう。
完全に個体の逃げ道がない、密閉したケージ
を選んで下さい。
脱走名人のイモリ類は、一度逃げ出してしまうと高確率で乾燥死してしまいます。
飼育者のミスでイモリ類を死なせないためにも、目星をつけたケージは購入する前に徹底的に調べ尽くしましょう。
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水槽系ケージのメリットデメリットとオススメ点について
イモリ類の飼育において、最も多く用いられるのが“水槽系ケージ”です。
水槽系ケージのメリットは、あらゆる角度からイモリ類を観察できることです。
フチあり水槽なら遠目でもイモリの状態が分かりますし、オールガラス水槽は底部から状態を見極める事すら可能です。
サイズのバリエーションが最も豊富であり、飼育個体に合わせた大きさの水槽が、簡単に手に入ります。
もちろん見栄えも良く、鑑賞面という点でも申し分ありません。
何と言っても水槽なので、本来の用途通り保湿性に優れており、滅多な事で水漏れもしません。
特殊な水槽でない限り、その規格に合った多くの飼育用具が揃っており、それらを応用しやすいという利便性も兼ね備えます。
デメリットは温度・湿度を低く保つ事が難しい点が挙げられます。
イモリ類は高温多湿の夏場に非常に弱く、水槽系ケージではエアコンをフル稼働させなければいけません。
保温性・保湿性ともに優れている水槽は、夏場のイモリ類飼育には全く向かないのです。
それに加え、基本的に水槽に蓋は付属していません。
爬虫類用の市販品を買うか?自作するかの2択となってしまいます。
爬虫類用品は高額なものが多く、自作するにもかなりの手間がかかるので、蓋がない水槽はややコストパフォーマンスが高いと言わざるを得ないでしょう。
オススメ点は水棲種のイモリ類飼育に非常に有用な点です。
水量も自分好みに調節でき、浮島を作ればそっくりそのままアクアリウム・熱帯魚飼育と同じ飼い方が可能です。
更に水槽に合わせた飼育用具が充実しており、夏場は冷却ファンや小まめなエアレーションで、ある程度の水温上昇も抑える事ができます。
余談ですが水槽用クーラーですと、水が冷たく陸地が暑いという矛盾した環境になり、寒暖差でイモリ類が死亡するケースが多い様です。
冷却ファンは良くて2〜3℃下がる程度なので、ご紹介してみました。
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プラスチック系ケージのメリットデメリットとオススメ点について
プラスチック系ケージ、通称プラケと呼ばれるものです。
このプラケ、実はかなりの優れものです。
メリットは費用が安く済む点、外れにくく通気性の良い蓋が標準装備されている点です。
このプラスチック系ケージの蓋を、水槽に流用できる商品があればいいのですが、何故か未だに開発されていません。
プラケ本体も本項で紹介する3つのケージの中で最も軽量であり、日頃のメンテナンスもかなり楽になります。
カブトムシブームに乗り、大小様々なプラケも増えたので、飼育するイモリ類のサイズにも合わせやすいでしょう。
殆どのショップがプラスチック系ケージで販売している点から見て、やはりイモリ類の飼育に適しているケージと言えます。
ただデメリットとして“鑑賞面”がやや乏しくなります。
文字通りプラスチックで作られているので、非常に傷つきやすく、どことなく安っぽい感は否めません。
そして経年劣化が早く、末期になると側面が著しく曇り、上部からの観察しか行えなくなります。
更に水槽系ケージ・専用ケージと比べると、飼育機器周りがかなり不便です。
フィルターやエアレーションを行うには、自分でコードやホースの通り穴を開ける必要があります。冬季にプレートヒーターを使用する際には、どのプラケースも四隅に足があるので、そこを削るか?アルミホイルなどの導体をかまさなければいけません。
プラケースの統一規格は水槽の様に定まっておらず、それなりの工夫をしなければ使用できないという、大きな障壁があります。
オススメ点はやはり、その利便性に尽きるでしょう。
鑑賞面さえ気にしなければ、冷却ファンなどは編み目越しに当てれますし、カボンバ・マツモと言った水草も充分育成できます。
掃除の際も水槽系ケージや専用ケージの場合、かなりの労力を使う一仕事となります。
その点プラケは非常に軽く、万が一落としてもガラスの様に飛散しません。
風通しが良く保湿性にも優れています。イモリ類の脱走もほぼ不可能という「飼育面」に限定すれば、かなり理想的なケージですよ。
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専用ケージのメリットデメリットとオススメ点について
最後に専用ケージですが、大抵が爬虫・両生類用と但し書きがついています。
縦長・横長の2パターンがあり、縦長のケージは同じ両生類のツリーフロッグなどに多用されています。
専用ケージのメリットは、何と言ってもそのスライド式の蓋でしょう。
窓の様に開ける事ができ、給餌や霧吹き等の日毎のルーティーンも難なくこなせます。
しかも専用の鍵すら用意されています。
大抵の専用ケージは上部が網状になっているので通気性も良く、前面の蓋にネット等を被せれば換気も容易に行えます。
各種飼育機器用のラバーホールが標準装備されており、コードやホースも気兼ねなく通す事が可能です。
ここまで説明すると最も理想的なケージに見えますが、専用ケージでもデメリットがあるんです。
専用ケージのデメリットは、根本的に爬虫類主体に作られているという点です。
そのため水槽としての機能が弱く、基本的に水を貯める事に適していません。
陸棲種のイモリ類なら問題ないのですが、水棲種となると「水位の低さ」や「水漏れの危険性」が生じてしまうのです。
“全てのイモリ類を飼うことができない”…これが最大のデメリットでしょう。
また価格帯もプラスチック系ケージ・水槽系ケージと比較し10〜20倍もの差があります。
この点も専用ケージ飼育をためらう要因の一つでしょう。
ただしオススメ点として、陸棲種の飼育には非常に理に叶っています。
少しくらいの霧吹きは爬虫類でも必要なので、全く問題なく行えます。
そして横から給餌ができるのは、陸棲イモリのストレスを大幅に軽減してくれるのです。
イモリ類の天敵は自然界では、大部分が真上から襲ってきます。そのため真上からの給餌に慣れない個体も多く見られます。
横から餌を与えられるのは、イモリのストレス軽減、そして拒食防止にも繋がるのです。
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まとめ
一口にケージと言っても多種多様であり、イモリ類に合うか否か?ではなく、飼育している種類によりけりです。
極端な話、イモリ類は飼おうと思えば八百屋で貰える発泡スチロールでも育てることができるほどです。
ただ、この例えは意外に大多数のペットに共通していませんか?
ケージの主役はやはりイモリそのものです。これからの飼育を目指す方、飼育の見直しをされる方もイモリを主役にし、暮らしやすいケージを選んであげて下さい。