エキゾチックアニマルの位置を確固たるものにしたモモンガの仲間たち。当初はアメリカモモンガ・フクロモモンガがモモンガ飼育の筆頭株でした。
ところが2000年代前半、野生採取されたアメリカモモンガから齧歯目特有の人畜共通感染症が持ち込まれてしまい、モモンガの輸入は全面禁止に陥ってしまいます。
その代わりとなったのが繁殖しやすく、齧歯目からも外れる“フクロモモンガ”でした。
今回はフクロモモンガの生態を通じ、名前の由来や特徴と生態、そして人との関わりの歴史についてご説明します。
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<目次>
フクロモモンガの名前の由来は? |
フクロモモンガの特徴って? |
フクロモモンガの生態とは? |
フクロモモンガの人との関わりの歴史 |
まとめ |
目次
フクロモモンガの名前の由来は?
フクロモモンガのメスは、通常1〜2頭の赤ちゃんを未熟児状態で産み、お腹にある「育児嚢」という赤ちゃん専用の器官で育てます。
オセアニア地方に広く分布するコアラやワラビー・ウォンバットなどの有袋目と同じ分類に入り、その育児嚢を袋に見立て『フクロモモンガ』と名付けられました。
他にも有袋類に属する哺乳類は、フクロの名前を冠するものが多く見られます。
世界最小の滑空動物である「チビフクロモモン」「フクロモグラ」「フクロギツネ」「フクロヤマネ」が代表例です。
それぞれフクロ〇〇と呼ばれますが、育児嚢で子育てをする特徴以外、その習性や見た目は多種多様です。
同じ有袋目の仲間に属する点は同じですが、フクロモモンガを始め、個々の種を見るとそれ以外の共通項をほぼ持たないのも特徴的です。
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フクロモモンガの特徴って?
フクロモモンガの原種は淡いクリーム色の腹部を持ち、灰褐色や褐色の背中に黒いストライプが入ります。
平均的な体長は尾部も入れると約15〜22cm程になり、体重は80〜150gにまで育ちます。
主生息国はインドネシア・オーストラリア・パプアニューギニアとなります。
舌が非常に細長く、木々の隙間の昆虫や花の蜜などを吸うのに適しており、下の前歯2本が獲物を噛み切る『切歯』として非常に発達しています。
近年はペットとしての品種改良も盛んであり、白変種のリューシスティック・淡い毛色を持つホワイトフェイスなど、毛並み・毛色を中心とした品種作出が盛んです。
有袋目という点もペットとしてはかなり珍しく、育児嚢を持つペットはほぼフクロモモンガのみ流通しています。
メスは通常、未熟児に近い形の子供を最大2頭出産します。
子供は自力で育児嚢までたどり着き、約60〜70日間ほど育児嚢で保育され、その後は巣の中で40〜60日ほど過ごし、成獣にまで育ちます。
その後は雄をリーダーとする、メスや幼獣が5〜6頭からなる群れを作り、集団生活を行うのです。
この「集団生活を行う」という点が、ペットとしての懐きやすさに繋がり、愛玩動物としての人気が出た所以ともなります。
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フクロモモンガの生態とは?
フクロモモンガは夜行性の動物であり、夜間にケージ内を盛んに動き回ります。夜鳴きもするので音に敏感な方や睡眠が浅い方は、別室にケージを移すなどの対策が必要です。
食性は完全な雑食性ですが、タンパク質・脂質は昆虫から、糖質などは植物を主体に摂取します。
野生下では主に樹液や花の花粉・果実や蜜などを好んで舐め、昆虫や節足動物などを見つけると、積極的に捕食します。
フクロモモンガの最も顕著な生態は、モモンガの名前を冠する様に、その皮膜を使い木々の間を『滑空』する事です。
同地区に生息する鳥類やコウモリの仲間には劣りますが、最大で60mほどの滑空が可能であり、餌を探す時・そして天敵から逃げる時に多用されます。
木のうろやほこら等を生活の拠点の巣穴としますが、明確な縄張り・テリトリーは持ちません。
群れ内のリーダーであるオス個体は、唾液や臭腺から出る分泌物でマーキングを行います。
しかし、通常のマーキング行為とは異なり、群れの仲間である印としての匂い付けに限定されます。
フクロモモンガにとり、匂いはかなり重要な意味合いを持ち、マーキング行為を受けていない個体が群れに紛れてしまうと、激しく攻撃し追い出してしまいます。
そのため飼育下でベタ慣れを目指す際は、人間の臭いを覚えてもらう事がかなり重要となるのです。
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フクロモモンガの人との関わりの歴史
有袋類の聖地であり、フクロモモンガ生息地の大半を占めるのがオーストラリアです。
1700年台後半から、人間が入植し定住してから、ほとんどの有袋類がその生息数を著しく減らしています。
絶滅種すら少なくありません。
パプアニューギニアは観光業の促進、インドネシアは返還後の経済的発展により、多くの野生動物の生息数が減りつつあります。
そんな中、フクロモモンガはかなり例外的な有袋類であり、その生息数は殆ど減少していません。
森林伐採などの開発事業には、その身体の小ささから、伐採後の少ない面積下にも見事に順応した数少ない動物です。
また距離が遠い森林地帯にも、人工物や家屋を中継点として滑空し移動する事ができ、致命的な影響も受けていません。
また20世紀ごろのペットブームから、世界的に愛好家を多く持つ様になり、人との生活すら共にする様になります。
一度の出産数は1〜2頭と少なく感じますが、出産周期が約3ヶ月と短く、この特性が個体数の減少に歯止めをかけています。
そのため品種改良も盛んになり、飼育下個体数を加味すれば、むしろ総個体数は人の手により増え続けていると言っていいでしょう。
離乳食の時期の幼獣からミルクで育てると、非常に人に懐くことから、現在海外では日本より遥かにペットとしての普及率が高いのです。
またフクロモモンガの大多数が生息するオーストラリアでは、野生動物を厳重に保護しています。
特別な許可がない限り、繁殖個体以外の野生動物の輸出は全面禁止されており、こう言った面から見ても、人との関係が最も良好な動物の代表種と言っても過言ではありません。
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まとめ
フクロモモンガはまだまだ人との歴史は浅く、急速にペット化された動物と言えるでしょう。
都市化・近代化が現在進行形で続く中でも、逞しく生き抜いている野生動物でもあります。
ペットと野生種のバランスがここまで良好な生き物は他にはいません。
見事な共生を遂げており、しかも珍しい有袋類の動物…それがフクロモモンガなのです。